JALグループ(JAL)とANAホールディングス(ANA)はこのほど、2020年3月期第3四半期(2019年4月1日~12月31日)決算を発表した。国内線で台風など自然災害の影響があったものの、全体的にはゴールデンウイーク10連休など長期連休や、ラグビーワールドカップ開催などによる訪日旅客の需要を取り込んだ。国際線や国際貨物は世界経済低迷の影響を受けビジネス需要が減少となった。
JALはグループ連結売上高が前年同期比増減なしの1兆1308億円、営業利益が同17.4%減の1201億円、経常利益が同12.1%減の1218億円、純利益が同29.4%減の763億円だった。世界経済の変動や米中貿易摩擦の影響もあり、国際線、国際貨物が不調だった。
国際旅客の売上高は同2.8%減の3921億円に。世界経済の減速に伴いビジネス需要が減るほか、香港線、韓国線では政情不安による需要減が影響し、減益となった。国内旅客の売上高は同2.7%増の4154億円に。観光、ビジネス双方の需要が堅調に推移し、特に沖縄方面が好調だった。商品・サービス面では、9月予約分からは国内線航空券の予約、購入が搭乗日の330日前から可能に。11月からはA350―900型機の特別塗装機「20th ARASHI THANKS JET」を就航するなど、選好性向上に努めた。
ANAはグループ連結売上高が同0.9%増の1兆5821億円、営業利益が同23.6%減の1196億円、経常利益が同20.5%減の1225億円、純利益が同19.1%減の864億円だった。世界経済の冷え込みによる国際線貨物需要の低迷のほか、今後の首都圏空港の発着枠拡大に備えた人件費、機材費、整備費などが増加して減益となった。
国際旅客の売上高は同2.3%増の5080億円に。ビジネス需要の弱含みや中国線の競争激化の影響を受けたが、欧州線、アジア・オセアニア線のネットワーク拡大や、ハワイ線へのA380型機投入などにより前年を上回った。10月からはB787―10型機を成田―マニラ線に投入して増席するほか、11月からは機内空間を一新したB777―300ER型機を羽田―ニューヨーク線、成田―ニューヨーク線に投入した。国内旅客の売上高は同3.5%増の5535億円に。ビジネス需要や訪日客の国内以上需要を取り込むとともに、各種割引運賃を柔軟に設定したことが奏功。10月から中部―熊本線を増便してネットワークを拡大するほか、12月からは国内全空港の旅客係員にAI翻訳機「ポケトーク」を順次導入して多言語対応するなどサービスの品質の向上に努めた。
20年3月期通期の連結業績予想について、JALは売上高が1兆4860億円、営業利益が1400億円、経常利益が1450億円、当期純利益が930億円とし、全項目で下方修正。ANAは売上高が2兆900億円、営業利益が1400億円、経常利益が1370億円、当期純利益が940億円とし、中間発表からの見直しは行わなかった。両社とも国際線での苦戦を予想している。